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「えっとトイレはこっちか…なんであんな遠い所に・・・」
トイレまでは一本道だが、結構距離があった。
しかも節電のためか辺りはなんだか薄暗い。
「~♪」
しかし英治は陽気に鼻歌を歌って歩く。
そして、やっとトイレにたどり着き、ドアを開けようとしたその時だった。
「ッ………ぁ…」
「?」
何かか細い声がトイレの中で響いた。
ん?なんか今聞こえたような…?
げっ、もしかして混んでんのか・・・う○こだったら嫌だな・・・
英治はかすかに聞こえたその声に、少し動きを止める。
しかし、とにかく早くトイレに入りたかった英治は、とりあえずドアを再び開けようと試みた。
が、
「やッ…やめっ……はぁっ…んんッ」
「可愛いね…君」
……ん??
英治はその場で硬直する。
今度はハッキリと聞こえた曖昧だったその声。
それは想像以上に甘い響きだった。
どんなバカでも分かるようなその卑猥な音に、英治は動揺を隠せない。
あれっ、ここ男子校だよな・・・?
あっ・・・なるほどなるほど・・・・・もしかしてさっき通りすぎたボインの女教員と誰かがこの中で・・・!?
いわゆるお年頃の英治にとって、色んな妄想が膨れ上がる状況だった。
英治はツバを飲むと、興味津々でドアを少し開け、トイレの中をそっと覗いた。
だがその直後、覗いたことを凄まじく後悔することになる。
え…
え……?
えぇぇぇええぇぇぇ!?
英治は息を止めながら慌ててそっとドアを閉めた。
「あ、あれ?た、たしかここは男子校…そうだよ男子校だよな…いや、そうじゃない、そうじゃなくて、え、え、えっ、なんで…なんで…男同士がキ、キスを…っ!!??」
どうやら英治の見た光景は、想像していたものと遥かに違ったらしい。
完全に気が動転していた。
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