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話によると、植木家の主人は貿易会社の幹部を任されていて、日本に留まらず世界中を飛び回っているという。
「まぁ主人の話なんてどーでもいいわ。大切なのは明日からあなたが通う学校よ!」
そういえば学校のことを忘れていた。
「ふふん、その様子じゃ全く忘れていましたって感じね。ところがどっこい!この幸恵さんにまっかせなさーいっ!!」
幸恵はいきなり立ち上がり、仁王立ちして右手で胸を叩いた。
「実は、…何を隠そうこの植木幸恵は名門、愛海(なるみ)学園の理事長さん、兼愛海女子高校の校長さんなのです!イェイ!!…ほら、拍手。」
2人分の拍手が7畳半のリビングに響いた。
愛海学園…
都会から離れた郊外の中では、一、二を争うほど規模が大きい学園。
この町の半分が学園の土地。大学、高校、中学に小学校が敷地内にある、正にマンモス学園なのである。
郊外の学校とは思えないほどの最新の設備。
環境保護を考慮し、かつ人々の触れ合いを豊かにさせる緑溢れる学園の中央広場。
端から見ると至れり尽くせりな学園である。
「ありがとう、ありがとう。でね、あなたをあたしんとこに特別に転入させようと思って。」
有り難いが、流石に何もせずに転入するのは駄目だろう。
そのことを話すと…
「え?何?テストしたいの??昨年定期テスト9科目ほぼ全部100点の人が?…勝手に前の高校の成績見ちゃったのは謝りますからそんなに睨まないで…。」
…プライバシー侵害ではないだろうか?
「コホン…えー、理事長たるあたしには、転入してくる子の情報を、ある程度は把握しておかなければならない義務があります。」
確かに、理事長ならば何も知らない人物を学校に入れさせることは出来ない。流石理事長、兼校長。
「だから…チョロっと…ホント、本当ちょっとだから!だからそんな睨ま…え?何で名前を忘れてたかって?えーと…ド忘れ…です。すみません。」
…上手く、やっていけるだろうか?
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