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嫌です、なんて口が裂けても言えなかった。
「そんな・・・、無茶苦茶ですよ・・・。」
仁にはこれが精一杯だ。
沙希には逆らえない。
オカ研の掟みたいなものだ。
まあ、沙希との身分の差みたいなのが違いすぎるからだ。
仁は貧民、沙希は支配者といったところだろう。
「あれ、沖先生は?」
舞があたりをキョロキョロしながら言う。
「どーせ、まだ船酔いで伸びてんだろ?」
静馬が茶化すように言った。
「誰が伸びてるのよ?」
静馬はビクッとした。
声の主はフェリーから降りて来て、静馬のすぐ後ろで仁王立ちをした。
顔は笑っているが、目は全く笑っていなかった。
「お、沖先生・・・。無事だったんですか。」
静馬は恐る恐る振り返りながら笑顔を作っていたが、顔がひきつっていた。
「大河内くん?人の悪口言えて楽しかった?」
沖先生はゆっくりとした口調で静馬に尋ねた。
「い、いやぁ・・・。悪口だなんて、そんな・・・。」
ははは・・・、と静馬は笑うしかなかった。
しばらくの沈黙。
静馬がゆっくりと後退りながら逃げるタイミングをうかがっている。
「大河内くん?」
沖先生が一歩静馬に近寄る。
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