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「はぁ~!きっもちいぃ~!!」
神谷仁(かみや じん)はフェリーの甲板で潮風にあたりながら大声で叫んだ。
夏には非常に最適な環境だった。
「何一人で叫んでんのよ、仁。」
大海原を眺めていた仁に一人の女子が話しかける。
大きなリボンで結んだポニーテールが特徴だろう。
非常に可愛らしい顔つきでおそらく男子からとても支持されているんだろう。
「なんだ、舞か。」
つまらなそうに仁がぼそりと言う。
「なんだとはなによ。」
舞には仁の呟きが聞こえていたらしい。
「・・・地獄耳め。」
これまたつまらなそうに仁がいう。
彼女の名前は黒崎舞(くろさき まい)。
仁の幼なじみで、家は隣同士。
舞の方が若干早く生まれていて、姉的な意識があるのか、仁にはいつも手を焼いている。
舞は確かに可愛いが、普段から女たらしみたいなイメージを放つ仁が、舞に反応しないのは幼なじみだからなのだ。
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