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「斎藤~、いる~?」
部屋の前でそう問うと中から、入ってこいと落ち着いた声が聞こえたので、皐月は遠慮なく襖を開けて入った。
「何用だ。そして何故お前の後ろに見知らぬ者がいる。」
部屋にさっき戻ってきたところだったらしい一は、皐月とその後ろに立っていた玄武を見て、質問を投げ掛ける。
『…?この斎藤って人、隠形したやつも見えるのか。』
核心めいた問いを呟いた玄武に頷き、皐月は斎藤の質問に答える。
「こいつは玄武だ。十二神将のひとり。んで僕は、斎藤に髪を切ってもらおうと思って。土方が斎藤は器用だって言ってたからさ。」
短刀を渡した皐月は前髪を指して、切って切ってと訴える。
斎藤は短刀を受け取り、ため息を一つ漏らすも律儀なのかわかったと言って、鞘から刃を抜いた。
「…どのくらい切ればよいのだ?」
斎藤がそう尋ねたとき、数人の足音が近づいてくるのがわかった。
「とりあえず目が隠れない程度にお願いします。」
だが皐月はその足音を気にしていないのか、はたまた無視しているのか、(おそらくは後者だろうが)ここかな…とかいいながら人差し指を前髪に当てて直線をつくる。
そのうち足音はだんだんと大きくなり斎藤の部屋の前でぴたりと止んだ。
―スパン
「斎藤さ~ん!!皐月さんが前髪切るって本当ですかぁ!!」
勢いよく襖を開けて入ってきたのは総司、平助、永倉、原田の四人であった。
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