優曇華(うどんげ)の花…その一

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私が中一の時、祖父は、末期ガンで入院していました。 母は、毎日看護に行っていました。 床擦れを防ぐ為に毎日背中をさすってあげたりしてるので、 肩が凝り過ぎて歯ぐきが真っ赤に腫れて痛むほどでした。 ある日そんな母が朝早く庭の柿の木に一生懸命よじ登るように何かをしてるので、 「お母さん、パジャマのままで、こんな早くに何してるの、おじいちゃんに柿取ってあげるの?」と、声をかけたのです。 そうしたら、怖い厳しい声で 「来るんじゃない。見るな!!」と言い放ちました。 私は、母のそんなキツい言葉をあまり聞いた事が、ありませんでした。 私はあわてて再び、ドキドキしながら布団に入り、いつもの時間に、台所へいくと、母は何も無かったかのように、朝ごはんを作り、 笑顔で家族を送り出してくれました。 それから十日後の夜、 祖父は、他界しました。 葬式も、四十五日、百箇日も、終わり、ほっとした頃、 母にあの日の柿の木の話しを聞いて見ました。 母は、「あの日は、ごめんね。誰にも見せたくも、知られたくも無かったの。」 と、話してくれました。
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