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手を伸ばした先の景色がひび割れたとき、
彼はたしかに世界の終わりを見た。
果てもなく広がる青空が、
ゆったりと波打つ海が、
歌うように躍動する森が、
地に墜ちたガラス細工のように細かく砕かれて、
結晶として散っていく。
あとには、
ただ闇だけがあった。
上も下もわからないほど暗いのに、
ごうごうと蠢く流れだけを感じる。
形あるもの全てを平らげる獰猛な流れに、
彼も堕ちようとしていた。
薄れいく意識の中で聴こえるのは、
男の笑い声。
聞きなれたダミ声が、
今は嬉しさのあまり、
裏返ってしまっていて。
それが、
まるでバナナをもらったサルみたいで、
ひどく滑稽だった。
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