☆Poce☆様

4/15
2606人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
* * * 「取り敢えず……風呂、だな」 病院の薬の匂いが身体に付いているような気がして気持ちが悪いのか、マンションに帰るなり一番に要の口を吐いて出たのはその言葉だった。 と、バスルームに湯を張りに行き戻ってくる要に、美和が心配そうに問いかける。 「ねぇ。お風呂なんか入って大丈夫なの?」 「……だから、お前がいるんだろ?」 しかし、即座に要から返ってくる返事に彼女は目を一瞬丸くした。 「へ? それって、二人で一緒に入るって事?」 「そ。俺一人で入って、もしまた倒れたりしたらどうすんだよ」 それが何かの聞き間違いであってほしいと願い、美和は念の為要に聞き返してみるが、彼から返ってくるのは当然先程と同じ意味合いの答えでしかなく、ベッドの上で何度もお互いの身体を求め合う事はあっても、要とまだ一度も一緒に風呂に入った事の無い美和は、その急な誘いと慣れない雰囲気にどうしても恥ずかしさが先に立ってしまう。 「じ、じゃあ別に無理しなくても……あっ! ほら。お風呂止めとけばいい……」 が、その事を誤魔化す為か、良案を思い付いたとばかりに、言いながら大袈裟に手を打ってみせる美和。 「いいから来る」 「え……ちょっと待ってよ!」 しかし、そう言って今一番もっともらしく聞こえる言葉で彼を思い止まらせようと試みるも、案の定そんな台詞が通用する訳も無く、美和は要に腕を掴まれるとそのままバスルームへ強制的に連行される事となってしまった。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!