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桜の花びら舞い散る4月。
真新しい制服に身を包んだ一人の少女は、胸をドキドキさせながら目の前にある掲示板を見上げていた。
「あ、あったよ! 真希! やった。高校でも同じクラスだね!」
真希と呼ばれた少女の隣では、やはり同じ制服に身を包んだ別の少女――莉子が彼女の手を握り嬉しそうに飛び跳ねている。
「莉子ってば……皆見てるから」
「えー? いいじゃん。だって嬉しいんだもん!」
周りの視線が気になる呆れ口調の真希とは対称的に、莉子はそんな周りの視線等お構い無しに真希に抱き着いてきた。
「あーもう……解ったから。で、担任は……?」
それでも何とか莉子を引き剥がしながら、クラス名簿の一番上に書かれた担任の名前に真希は目をやる。
と、彼女はそこにある名前を見た瞬間、口をポカンと開けてその場に立ち尽くしてしまった。
「ん? 片山……要? 男の先生だよね。カッコいいといいね」
「え? ……あ、うん。そうだね。ほら、早く教室行こ」
真希よりも先にその名前を口にした莉子の目には、明らかな期待の色が浮かんでいる。
――まさかね……――
そんな莉子に曖昧な笑顔を返した真希は、自分達同様、新入生達が各々向かっている教室へと足を向けた。
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