∞様

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* * * 「……ん?」 カーテンの隙間から射し込む薄い太陽の光。 「いつも」の自分の布団とは明らかに違う感触と香りに、少女は閉じていた目をゆっくりと開けた。 身に付けているのは「いつも」自分の着ている馴染みのあるパジャマ……。 しかし、その「いつも」と違っていたのは、横を向いた体制の彼女の頭の下にあるのが枕ではなく、男物であろうパジャマに包まれた一本の腕だったと言う事。 同時に、背後にも温もりを感じた彼女は自身の置かれた状況に一瞬ぎょっとし、恐る恐る確かめるように自分の下に伸びる腕の持ち主の方を見やった。 「随分良く寝てたな、ゆかり」 「え、かな……め……!?」 彼女――ゆかりが顔を向けた先にあるのは、もうすっかり見慣れた感のある綺麗に均整の取れた男性――片山要の顔だった。 「おはよう」 「お、おはよう。あ! ごめっ……腕しんどいね」 要は空いている方の手でゆかりの髪を撫でながら、目を細めるが、彼の顔を見た途端、寝起きの顔を見られた恥ずかしさと、昨夜の出来事を思い出したその気まずさから、ゆかりは逃げるように再び要に背を向けようとした。
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