1399人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
幼い頃から、従兄弟の隼人にぃに連れられて不良のやつらと絡むのが日常だった。
両親は、俺をまるで存在しないもののように扱う。寮に入ってからは尚更。
そんな家庭事情を知ってか、週に五回はそのバーに遊びに行っていた。
口で言うほど、簡単な話ではない。
隼人にぃが迎えに来てくれる日はそのバイクの後ろに、小さなヘルメットを被って乗って行っていたが、どうしても迎えに来れない日というものがある。
そういう時は、無駄に渡されていた小遣いで、寮を抜け出しその場所へ遊びに行ってた。
「テメェ、なにジン独り占めしてんだよ」
「あ?文句あんのか」
「ありまくりだっつーの。ジン、ほらそんな変態の膝より俺の膝においでー」
「変態に変態て言われたくねぇよ」
龍聖、というのが隼人にぃのチームの名前だ。
総長である隼人にぃの連れだからか、俺は随分とあそこでは可愛がられた。
可愛いと言われるのが嬉しかった。
こんな俺を取り合いする皆がおかしかった。
家族の温もりを知らない俺は、仲間のいる温もりを知った。
幸せだった。
これ以上の幸せなんて、ないんだと思っていた。
学校の友人たちのことも大好きだけれど、友人よりも仲間が大切だった。
みんな優しい。
抱き締めてくれた。
キスもくれた。
セクハラまがいなこともされたけど、そのたびに他の仲間がその一人を責めるのが面白かった。
俺からキスしたら、すごく喜んでくれた。
店に行くたび、おかえりって言葉をくれた。
最初は戸惑ったけど、そのうちただいまって返すようになったら、皆が笑ってくれた。
そんな日常が大切だった。
そして中学二年の夏。
夜でも蒸し暑い空気に俺はパタパタと手で仰ぎながら、カウンターに皆に囲まれながら座ってた。
そこへ扉を開けてやってきたのは、一服してくると言って数時間前に店を出ていった隼人にぃ。
「おいおい、人の可愛い従兄弟に手ぇ出すなよ?てめぇら」
いつもの軽口が聞こえ、俺は振り返る。
でも、隼人にぃの姿を視界に入れた瞬間、いつものおかえりを言う前に俺は駆け寄っていた。
「隼人にぃ!!?」
見た姿はボロボロで。
顔に殴られたような後もあるし、腕や足には擦り傷や痣がたくさんある。
駆け寄ったのは俺だけではなく、バーにいた皆がぎょっとした目で隼人にぃに視線を注ぎ、幹部のみんなは慌てたように血相を変えて隼人にぃに肩を貸した。
最初のコメントを投稿しよう!