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その後,今までつながらなかった打線がつながり,満塁の場面でツバサの番が回ってきた。
『マジかよぉ。打てる自信ない…。』
ツバサは弱気になっていた。
フッとポケットに手をやると,彩乃からもらったお守りがあった。
ツバサはお守りにそっと触れ,目をつぶり深呼吸をした。
゛頑張って!゛
一瞬,彩乃の声が頭に響いた。
『そうだ。負けられない。』
ツバサはそお思い,闘志が甦った。
バッターボックスに立った。
一球目,二球目は見逃し。
そして,三球目。
゛カキーン゛
ボールは空高く舞い上がった。
彩乃も祈るようにボールを,そしてツバサを見つめていた。
また,ツバサもボールの行方を追っていた。
時間がゆっくりと進んでいると錯覚さえしそうだ。ボールが地面についた瞬間,大樹をはじめ一斉にホームベースへと走り出した。
そして,逆転のランナーがホームへと滑り込んだ。
しばらく,音のない世界が広がった。
「セーフ!」
審判が判定をたかだかに告げた。
観客席は歓喜と悲しみの声に包まれた。
ツバサたちは,見事に初戦を勝ち抜いたのだった。
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