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どれだけ,深い眠りへと入っていたのだろうか。
目を覚ました時,外は明るく輝いていた。
゛コンコン゛
突然ドアをノックされた。
『はーぃ。』
ツバサは親か看護師だろうと適当な返事をした。
「失礼しま~す。」
どこか,聞き覚えのある声だ。
「元気そうで,よかったよ。」
ツバサは,目を真ん丸にしている。
そこにいたのは,親でも看護師でもなく,花束を持つ彩乃が立っていた。
彩乃に会うのは新人戦の始まる前夜 以来だった。
『この右腕以外は元気なんだけどな。』
彩乃におどけたように笑いかけて言った。
彩乃は心配そうな顔を浮かべていた。
そしてその心配を悟られないために,少し引きつったような笑顔で言った。
「優勝おめでとう。」
ツバサは素直に喜んだ。
『ありがとう。安田のお守りのおかげだよ。』
ツバサは少年のような笑顔を見せるが,怪我の右腕が痛々しい。
『俺,安田に言いたいことがあるんだ。』
ツバサが言うと,それまでの病室とは時間の流れが変わったように,緊張と沈黙が支配した。
「うん。」
彩乃はうなずいた。
『俺さ。素直になれなくて言えなかったけど・・・』
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