アルビノ・コンプレックス

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「小鳥遊さん。貴女はどうも、その番組企画を前向きに考えておられる様だが、僕は反対だ。アルビノを晒し物にするなんて事には、僕はどうあっても賛同なんてしかねる。ひっそりと、そっとしておくべき事なんだ」 石橋の気持ちは、解らなくはない。アルビノを好奇の目に晒したく無いという事なのだろう。当事者では無くとも、肉親がアルビノ・キャリアであるのなら、そう思っても当然である。 ……だが私は、たとえそうであってもそれを晒すべきであると考えていた。 健常人の好奇の目に晒される事自体は、私だって楽しい事では無い。 だが、そういった先天的な障害を持つ固体がこの世に存在し、苦しんでいるという事実を世に知らしめる。 この行為自体は、辛い事だが不必要な事では無い。 「──あの」 ふと気付くと、今度は坂本少年が私と石橋のすぐ近くまで来ていた。 「ごめんなさい。お話を立ち聞きするつもりは無かったんですが、偶然お話の内容が耳に入って来たもので」 石橋が、坂本少年の顔を見て目を丸くする。 「もしや……君もアルビノなのかい?」 少年の肌を間近で見ると、やはり間違い無い。透き通る程に白い腕が、それを証明している。彼は、石橋の問いに無言で頷くと、静かに言葉を繋げた。 「実は、彼女が村田さんに呼ばれてその付き添いに僕が来てる事になっているんですけど……、僕自身も今夜、あの人に直接呼ばれてここに来ているんです」 ……そういう事か。 村田は、今回の企画に対する当事者を、ここに集めようとしたらしい。 私は、坂本少年の意思を確認するべく口を開いた。 「君は、このテレビ番組の企画の事を、どう思ってるの?」 石橋も、私の言葉に合わせて彼の返答を待つ。 「僕はあまり興味がありません。……ただ、あの人が彼女にした行為は許せない」 彼の言う『彼女』というのは、無論萌葱色のワンピースを着た穂波という少女の事だろう。 『彼女に対する行為』。 村田と穂波の間に、何かがあったのか。 私の中の、一度治まりかけた村田に対する嫌悪感が再来する。 坂本少年は、静かな怒りの感情を込めた視線を、村田の背中に送っている。 「……勝手に会話に割り込んですみません。ただ僕は、あの人が信用出来ない。……それを言いたかっただけなので。じゃ」 勝手に会話を終えると、彼は素早く踵を返して穂波の元へと戻った。
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