ある日夜の下

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「!」 目を開くと、辺りを照らす炎が真っ先に目に飛び込んできた。 「今の…」 木に寄り掛かったまま、辺りを見回す。 でも暗くてほとんど何も見えない。焚き火の明かりのおかげで、周辺の木々と、眠るみんなの影が確認できるくらいだ。 「………」 僕の足は、自然とあるところへ向かった。 僕がさっきまで腰掛けていた木の、ななめ後ろ。焚き火の明かりがあまり届かない、薄暗い木の下。 「イリア…起きてる?」 目の前で横になる影に、僕は小声で話し掛けた。言葉は返ってこない。 傍まで近づいて見ると、毛布にくるまり、仰向けになって眠るイリアが、そこに居た。 「………!」 自分の影が彼女の寝顔を覆ってしまっていることに気が付いて、僕は少し横に逸れた。 今まで見たことが無かった、彼女の寝顔を見つめたまま、僕はどのくらいその場に立っていたのだろう。 ただ、そうしていると心に燻る不安がきれいに消えてゆく気がして、気が付くと僕はその場に腰を下ろしていた。 「イリア…。あまり気にしないで。チトセの言ってた事に、根拠なんて無いんだから。天上が崩壊したのはイナンナのせいなんかじゃない。…それにチトセはあの時君を指さしてたけど、それだって本当はおかしいよ。イリアが僕に言ってくれたみたいにさ、前世は前世で、君は君なんだ。イリアが気にすることなんてないんだよ」
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