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後ろの方で、火の燃える音が微かに聞こえる。
周りから聞こえてくる、小さな虫の声。
そして、目の前で寝息をたてて横になるイリア。
薄暗いこの場所に座っていると、それだけで自分がまだ夢の中に居るみたいに思えてくる。
「ごめん、イリア」
現実であるはずの空間に座ったまま、再び僕は言葉を出し始める。
「きっと『起きてる時に言ったら!?』って思うよね。
…僕も、そう思うよ。面と向かって君に言えたらなあ……。『前世なんて関係無い、君が好きだ』って…」
僕は立ち上がって、焚き火の近くへ戻ろうと歩きだした。
ゴソッ…
「!」
嫌な予感がする……。
音がしたのは、さっきまで僕が座っていた方から。……イリアが寝ているはずの方から。
僕はゆっくり、後ろを振り向いた。
「イリ………」
予感は外れた。
赤い髪が、ぼんやりと見える。寝返りをうったんだ…。
「はぁ…、良かった………のかな?」
胸の鼓動がおさまらないまま、僕は自分の荷物のある所まで戻った。
…今度は寝ないように気を付けないと。僕が最後の番で、皆より楽なはずなんだから、寝るわけにはいかない。
今日も僕は待つ。明日が来るのを。またイリアと…みんなと会える、明日を。
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