虚偽

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あれから五年後、ルクは青年になった。 ツアイスは相変わらず鈍臭いが、変わらないまでも成長し、少年臭さは抜けていた。 変わらない二人の容姿、ただ大きくなり、たくましくなっただけ。 今も変わらず主従関係など関係なく、仲良く、お互いを心のよりどころとしていた。 そう、はたから見れば、親友のように映っていただろう。 だが、目に見えることだけが全てではない。 回りの人間は全くとして予期していなかっただろう。 ――ルクの自室 部屋のベッドに腰掛けるルク。 窓際に寄り掛かり、腕を組んでいるツアイス。 「なあ、ルク……」 「なに?」 笑みを浮かべ聞き返すルクに、ツアイスは真剣な表情になって話しかける。 「お前さ、俺に、何か隠してないか?」  「なんだよ、いきなり……。僕がツアイスに隠し事なんてする筈無いだろ?」 微笑みながら返すルクに対してツアイスは苦衷の表情を浮かべ、続ける。 「やっぱりそうだったのか……」 「どういうことだい? ツアイス」 ルクの笑顔を窓から入り込んだつきの光が照らし出す。 「一年前、旦那様が死んだ時だ。お前初めて泣いたよな。父上、父上って一日中な」 「そう……だね。でもそれは」 「まあ、待てよ。まだ話は始まったばっかりだ」 否定をしようと、口を挟むルクを遮る様に話を続けるツアイス。 「あの時、遺体……見つからなかったよな」 「そうだね……どこに行ったんだろうね」 表情を変えずに首を傾げるルク。 「実は、旦那様は死んでなんかいないんだよ」 ツアイスの言葉を聞いた瞬間、笑みが崩れ、無表情になるルク。 「俺が旦那様を見つけたとき、旦那様は瀕死だったが生きていたんだ。だけど死んだことにしたんだ。俺がな」 窓に寄り掛かっていたツアイスは寄り掛かるのをやめ、ルクの元に歩き出す。 「なんでだかわかるか?」 「わからないな。なんで?」 「鎌をかけたんだよ。旦那様をあんな目にあわせたのは誰なのか、知るためにな」 「それで? 犯人は見つかったのかい?」 「ああ、見つかったよ」 歩みを止め、ルクの前に立ち、続けるツアイス。 「犯人はな……」
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