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日が沈みかけた頃、砂漠に堂々と影を落とす城があり、その城の中庭から木と木同士がぶつかる音がする。
そこにいたのは1人の少年だった。
少年は燃えるような赤い髪をしている。
目も髪と同じ赤い目だ。
布で出来た練習用の防具を身に付け、自分の腕ほどもある木の剣で、目の前にある人の形をした木の像に力一杯斬りつけていた。
汗が少年の額を伝い、頬を通り地面に吸い込まれていく。
少年は時々服で自分の汗を拭いながら、剣の練習に打ち込んでいた。
「おーい!フェイア!また剣術の練習か?」
フェイアと呼ばれた少年が振り向いた。
そこには背の高い1人の少年がいて、フェイアのところへゆっくりと歩みよっていく。
フェイアは剣を持つ手を止め、歩み寄ってくる少年を見つめた。
「うん!じゃないとアル兄様みたいになれないから」
フェイアは目を爛々と輝かせながら言った。
背の高い少年は深く、呆れたような溜息をつく。
「俺みたいにならなくても…。もっといい目標があるだろ?例えば…デュラン様とかさ。上の人を目標にしろよな」
「いいんだよ!僕にとっては兄様が目標なんだ!それ以外の人じゃ駄目なんだよ」
フェイアはそう言うと木の像に向き直り、また剣の練習を始めた。
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