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ロイの一撃は男自身には当たらなかったが、フードを切り裂いていた。
その切れ目から見えた男の顔を見てロイは息をのんだ。
そして悲しみと恨みの入り混じった表情をみせる。
「まさか…お前…だったの…か…」
ロイは声を振り絞った。
「な……ぜ…」
「何故?力を手に入れたからさ。私はこの世界に唯一絶対となって君臨する。そのために邪魔になる奴を消しているのだ」
男は当たり前のことのように言い放った。
「馬鹿…だ…な……ヴォル…ティス……闇の…力に手を…出すなんて…」
「黙れ!お前には力があった!お前には分からないだろうロイ!!
弱かった私の気持ちが!力がなかった私の気持ちが!!」
ヴォルティスはロイに向かって叫んだ。
「どうして…何も…言わなかったんだ…ヴォル…ティス…」
「何を言うんだ?私に嘆けと?力の無いことを?弱かったことを?
言ったって何も出来やしないのに?ふざけるな!!」
ロイの首を絞める手に力が入る。
「楽しかっただろう?親友面して…見下して…さぞ気分が良かっただろうな?」
「ヴォルティス…違…」
「五月蝿い!その目が嫌なんだ!同情するような…蔑むようなその目が…お前には分からないだろう……絶対にな……
もう用はない…さらばだ…昔の友よ…」
そう言うとヴォルティスは呪文を唱えた。
次の瞬間、闇が小さな家を囲む。
闇が去った後には、ヴォルティスだけが大きく笑い声をあげながらがれきの中に立っていた。
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