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母親はその昼行動に出る。
旦那も娘もいない家。
この家は母親の支配する小屋になる。
娘の部屋に入り、ベッドを眇める。コレのせいだ。
恐らく全てはコレのせいなのだ。
コレさえ無くなればまた家族は団欒する。
母親はベッドに腰かける。
… … … … 。
また、あの違和感がベッドの中からきこえた。
間違いは 無い。
時々ベッドを素手で揺らし、ベッドの声を頼りながら、大振りの布切りハサミでシーツを裂く。
素手に握るハサミの刃先がクッションに入り込み、胎児の腹切り出す感覚。
医師が、生まれたばかりの赤子の腹に異物が発見されたと知り、それをこのハサミで肌を切り出す感触はきっとこうなのだろう。
母親は無機質にそう決めた。
この時、既に母親は狂っていた。
刃先がベッドの中ほどまで到達する。
母親はいつの間にか満足そうな笑みで作業していた。
不思議な高揚感が母親の筋肉を動かす。
サックリと裂けた切れ目に手を差し込み、ベッドの声の元凶へと触れた。
触れば判る。
持てばもっと判る。
握り絞めればもっともっと判る。
コレは悪。コレは悪いモノ。
母は力任せに毛深いソレをベッドから引き抜いた!
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