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「鳥になりたい」
病室に静かに響いたその声は、一瞬空耳かと疑った。
だが外をじっと見つめる妹を見て、空耳ではないと感じた。
「鳥になったらどうするんだよ?」
リンゴを剥きながら、在り来たりな質問をする。
どうせ自由に羽ばたきたい、とか当たり前の答えが返ってくるに違いないと思っていた。
「そしたらこんな病室抜け出せるから」
外を見ていた妹がいつの間にか俺を真っ直ぐ見ていた。
その瞳は、まるで人形のようで、俺の行動は停止した。
「多分私の病気は一生ならないのよ、一生ここから出られないの。」
ぽつりぽつりと言われる言葉に、胸が締め付けられるような痛みが走った。
近くで見てるから、余計にその言葉の重さがわかった。
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