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そう、この席からでないとあの人の姿が見えないのだ。
最近まで興味なんてなかった。
私は文系の地味な生徒で、あっちはバリバリ体育会系教師。
接点なし、会話なしの関係。
でも、ある日部活で使う写真を私が階段にばら蒔いて
一人寂しく拾ってた時に「大丈夫?」と優しく声を掛けてくれた。
恥ずかしくて、顔を縦にしか振れなくて、そしたら「手伝うよ」と笑ってくれた。
会話なんか全然なくて、ただ静かに紙と紙が摺れ合う音だけが暫く響いた。
「……あのさ」
沈黙を破ったのは彼。私は「はい」と返事を小さく返した。
「この写真、お前が撮ったの?」
ぺろりと一枚の写真を見せられ、あっと情けない声が喉から出てくる。
夕日に照らされてキラキラ光る町並みの写真。
確かに、私がずっと前に撮った写真だった。
「そうですけど…それがどうしたんですか?」
「この学校に来てしばらくして廊下に貼ってあったからさ」
綺麗だよね、これ。
写真を見つめながら優しく笑う彼の姿に、心臓がどきりと音をたてた。
「どんな子が撮ったんだろってずっと気になってきたんだ!」
くるりと振り向いた彼が子供みたいに無邪気に笑っていて、さっきまでの表情との差にまた心臓が跳ねる。
「あ、ありがとうございます…」
恥ずかしくなって、彼から目を逸らしながら言うと
あ、ごめんね!と写真を返してくれた。
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