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「…やっべ!部活の時間だ!」
腕に付いているものを見ながら、彼が慌てて立ち上がる。
お礼を言わなければ、
拾ってくれた事・誉めてくれた事。
「あの、」
「ねぇ!」
言葉を出そうとした瞬間に、彼の言葉で遮られる。
「また写真見せて!俺、お前の好きだからさ!」
満面の笑みで言われたその姿は、どんな被写体よりもキラキラ輝いていて、私の世界を止めた。
彼が階段を降りて行った後も、ただその場所に止まっていた。
たったそれだけの出来事。
なのに、気付いたら毎日彼を目で追っていた。
放課後になると誰もいなくなった教室で、大好きな風景と彼を見るのが日課となった。
亜沙美には、「見てるだけじゃ気付いてもらえないよ!」と毎回のように怒られるが、
今は見てるので精一杯。
それ以上の事をしたら、心臓がいくつあっても足りない。
でも、もう少し、あと少ししたら、勇気を出して彼に話しかけよう。
新しく撮った写真を持って。
あの日の約束を果たすために。
(だからあともう少しだけ目で追うだけにしておく)
END
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