民謡『森のクマさん』

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森の中を駆け抜ける彼女。 それを追う熊は、何か呟いていた。 「…落とし物。」 やっと聞き取れたアリスは、熊の右手に目をやった。 するとそこには、恋人ティムに貰った、大切な貝殻のイヤリングがあった。 自分の耳に手を触れ、確信を得る。 逃げる時に落としたのだと。 そしてあの熊は、殺戮衝動を必死に抑えながら、そのイヤリングを届けようとしているのだと。 彼女は立ち止まった。 熊は必死で渡そうとしているが、今でも彼女を襲わんと、震えが止まらない。 元は心優しい熊だったのだろう。 アリスは、せめてもの礼として、歌を歌う事にした。 聖なる魔法のかかった歌だ。
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