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「何、頼り無い返事をしているのですか。
そんなことでは、浪士組の名が泣きますよ、林君」
と、沖田はそう言うとニッコリと笑った。
林はその笑みを見て、少し顔を赤くして、思わず沖田から目を逸らしてしまう。
林信太郎は、衆道ーーつまりは、男色ではなかったが、沖田の微笑みを見たら誰でも顔を赤くするだろう。
彼の容姿は女性のように美しいからだ。
その上、日焼けをしていない白い肌に、サラサラの漆黒の長髪は邪魔にならないよう一つに束ねていた。
見た目なら弱く見えてしまう沖田総司(オキタ ソウジ)は、壬生浪士組の中でも一、二を争うほどの剣豪でもある。
沖田の美しさも凄いと思っている林だが、それ以上に尊敬しているのは、沖田の強さだ。
たまに稽古で何回か殺されかけたりしているが、殺されかけるたびに林は沖田の強さに心酔していった。
いつかは沖田のような剣豪になるのが林の夢でもある。
「何、ぼんやりしているのですか?林君」
と、そんなこと林が考え事をしていたら沖田がそう話かけてきた。
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