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少年は血の滴る刀を懐から取り出した懐紙(カイシ)で拭き、刀を鞘に納めた。
血で汚れた懐紙は捨てずに懐に入れる。
そして少年は、沖田に気づかないまま立ち去ろうした時、
「沖田先せ…っ!……うっ……」
と、沖田を呼ぶ声がした。しかし、死体を見つけたことで呻き声をあげた。
沖田は名前を呼ばれたことで、我に返る。
自分の部下達がやっと追い付いたのだ。
しかし、いきなり目の前に死体が三体も倒れていたので部下達は全員怯んでしまう。
沖田は部下達のことは無視して少年を見た。
少年は立ち止まり、こちらを向き、沖田と部下達を静かに見つめている。
暫く、無言で見つめ合っていた少年、沖田、部下達だったが、
「貴方は、何者ですか?」
と、沖田が少年に尋ねた。
「…………」
しかし、少年は何も言わない。
「貴方が、この人達を殺したのですよね?」
「…………」
「何故、殺したのですか?」
「…………」
「何故、黙ったままなのです?」
「…………」
沖田は何度も少年に尋ねたが、それらはすべて無言で返ってきた。
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