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何度も問いかけたのに、全て無言で返ってきたので、沖田は尋ねるのを諦め、右手を軽く掲げた。
すると、彼の部下達四人が少年を囲むように円の陣形を組む。
完全に包囲され、逃げ出すことが困難な状況下に置かれた少年の反応は、微かに目を細めるということだけだった。
10歳にしか見えない少年にしては冷静すぎる様子沖田以外の隊士達は背筋が薄ら寒くなるような感覚が走った。
普通の子供なら、大の男五人に囲まれたなら、もっと取り乱すものだと思う。
いや、それ以前にこんな時間に子供が一人でいるという時点でおかしいのだが……。
〈もしかして、あの子供は物の怪なのかもしれない……〉
そう、思ったのは林信太郎。
彼は、少年の背後にいて、少年を注意深く見ている。
「聞きたいことがたくさんありますので、一緒に屯所へ来てもらいます」
沖田はそう言うと、刀を抜いた。
それに合わせ、他の隊士達も刀を抜く。
「大人しくしてください。
抵抗するならば、切り捨てます」
子供でも容赦はしないとでも言いたげに、沖田は微かに殺気を滲ませながらそう言った。
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