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  「君、兼城 洋一くんじゃないの?今年、全国大学陸上競技大会で、男子1000mと男子100mの日本新記録を更新した、俊英(しゅんえい)大学の」 「……え?何で分かるんだよ?」  これに洋一は目を丸くして森泉を見た。  まさか、俺の名前を知っているとは知らなかった。つか、今年、日本新記録出しちまったから、日本人なら誰でも知ってるか。  けど俺、あの大会から髪を染めて髪型変えたんだぞ?  しかも、街に出掛ける時はバレないようにサングラスを掛けてるし。大体わかりにくい筈なのに、何故(なぜ)? 「森泉さん、何で分かるんですか?」 「そりゃあ、コイツがあるルートで手に入れた情報を使ったからだな」 「え?」  突如、ヒノちゃんが出した一言に洋一はポカンとして彼を見ると、ヒノちゃんは僅かに微笑して(きびす)を返し、奥の部屋へと歩き出した。 「気になるならついて来いよ。何故、俺達が今のお前を知っているのか、見せてやるからよ」 「あ、はい」  ヒノちゃんが、振り向きもせずに洋一に声を掛け、洋一は彼のあとを小走りでついていき、奥の部屋に入った。そのあとに森泉も続き部屋に入ると、扉を閉めて内側から鍵を掛けた。  入った部屋の中は広かった。今まで、テレビのバラエティー番組でしか見れなかったダンスの確認が出来る大きな鏡に、白い長テーブル。パイプ椅子は6つあり、そのテーブルを挟むように並んで置いてある。  そして、テーブルの上にはポットと使い捨てのプラスチックのコップにお菓子、台本らしき本も置いてあった。  
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