ようこそRe:set[レセット]へ

2/35

454人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
   カタンッカタンッ  カタンッカタンッ 「噂のFLARE《フレア》のメンバーが現れた?お前さ、FLAREって単なるネットの架空で出来た奴らだろ。現実見ろって」 「いや、ホントに現れたんだって!あたし、ちゃんとこの目で見たんだって!って…洋一、ちょっと聴いてる?」 「聴いてるよ、バァカ」  平和な日の朝っぱら。いつも気怠(けだる)げで、ブロンドの髪を風に靡かせている兼城 洋一は、同じ大学仲間でアニメ・声優好きの翌桧と電車に乗っていた。  洋一は、翌桧の話にはついていけない時がある。特に、マイナーなアニメや声優の話が出た時だ。  これの場合、大抵は右から左へ受け流してきた。だが、色々な情報が頭に入っていくうち覚えてしまった。翌桧とは違うタイプで、凄く個性が強烈な外道腐女子に、 「アイツが不機嫌になったら面倒だから」  と、知識を叩きこまれたからだ。  今、洋一は声優の中で有名な三人の名前や、どんな奴なのかは言える程度に覚えている。しかも、男性。女じゃないことに若干虚しくて泣ける程。  そして最近、ネットでも浮上してきた“FLARE”という謎のユニット。翌桧によれば、そのチームはとある人気声優で構成されてるとか。その為、翌桧はFLAREに熱が入り様々な情報を仕入れ、興奮しながら洋一に話してくる始末。 「んで、今日は何の為に俺を中野に連れてくんだ?まさか、FLAREに会う為とかじゃねぇよな?」 「もちろん、そうに決まってんじゃん!」 「……バカバカしい」 「ちょっと、何ソレ?冷たい反応なんですけど」  翌桧は少しふて腐れて、電車の外の景色を眺めた。  別にイイじゃないか、こんな反応くらいさ。俺、そのユニットには興味ないんだからよ。  そんな翌桧の様子を洋一は横目で見て、少し溜め息を吐いて電車の窓から見える景色を眺める。  デカイ超高層ビルの群。その間の道を駆け抜ける様々な形をした車。そして様々な服装をして歩く人々。  こんな現実に、ネットの架空のユニットなんかある訳が無い。  洋一はそう思い腕時計に示された時間をチラリと見て瞳を閉じた。  その様子をSHINZENが、少し離れた位置で楽しそうに微笑んで見つめていた。  
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加