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「(マジかよ)」
洋一は信じられないことに唖然として、瞬きを二回ほどしてから、再びホール前の看板を見た。
看板に書かれているのは、声優ファンなら誰でも知っている(洋一は最近知ったばかり)、有名な男性声優の名前ばかり。それにグループ名が“FLARE”という、英語で書かれた名前。
ホントに存在していた。ネットの単なる噂ではなく、実在として。
洋一は、まじまじと看板を見つめて軽く溜め息を吐くと、自分の隣にいる一緒に来ていたガールフレンドを見ようとした。
「あ?!アイツ、勝手に何処かに行きやがったな?!」
一緒に来ていた筈の翌桧がいない。しかも彼女は、自分を付添人として連れて来たのにも関わらず、一言告げずに何処かへ行ってしまった。
「これだから、アイツに付き合うのはめんどくせェんだよな…。友達だからしゃあないけど」
洋一は、ブツブツと文句を垂らしてホールの近くのソファーに座ると、ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出し、それを開いていじり始めた。
「ねぇ、其処のお兄ちゃん。何を調べてるの?FLAREのこと?」
「ん?」
いきなり前方から声を掛けられ、洋一はスマートフォンから前方に視線を移した。
黒いジャケットに、肩に少し届かないくらいの長さの焦げ茶の髪。そして黒縁の伊達眼鏡を掛けた三十代前半に見える体格の良い男。その男がニカリと笑って、自分の向かいのソファーに座っていた。
「貴方、誰ですか?」
「え?俺?俺は森泉 智章。単なるそこら辺にいるオジサンだよ」
「ふ~ん、森泉さんねぇ。……って、
森泉 智章だとォ?!」
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