《序章・ある少女の受難》

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…するりと襖が開いて、お祖母さま達が入ってきたようです…でも私に見ることはできません… 「おやおや、小さく丸められちまったこと…達磨さんとはよく云ったもんだよ。」 「子供なんで、ちっとばかり手加減はしたんですがね…」 「いや、上等だよ。…だけど、こうして見るとちょっとばかり可哀想な気もするねぇ…」 お祖母さまはしゃがんで、座敷に転がされている私の体をあちこち触ります。縄の具合を確かめているのでしょう。骨身に沁みるとはまさにこのことです。ぴくりと身動きするだけで体中の骨がきしむようです… 「これに懲りたなら、もうあれが好きこれが嫌いとは言わないか。」 顔を上げられないわたしを覗き込むようにしてお祖母さまがお尋ねになります… 「あぅぅっ、あぅぅっ…」 わたしは動かない首を一生懸命縦に振り赦しを乞いました。…この縄を解いて貰えるならどんな言いつけでも聞くし嫌がらずになんでも食べます… …けれど一瞬の希望は直ぐに打ち砕かれてしまいました… 「…ふん、小狡そうな目だよ…今更赦して貰えるとでも思ったかい。」 お祖母さまの手が、猿ぐつわの手拭いの上から私の口と鼻を塞ぎます… 息ができない…苦しい…死ぬ… 逃れようとしても身動きができないのです。さっきの辰さんの子守り娘の話が頭を掠めます… …気が遠くなりかけた頃、やっとお祖母さまが手を離してくださいました。私はむさぼるように息を吸いました。 しかし… 「猿ぐつわが緩いようだよ。縄はまだあるんだろう。」 「へい。奥様。」 …顔に縄が掛けられます。手拭いの上から口を割るように縄が噛まされ、ぐいぐいと締め上げられます。そしてその縄で顔ごと膝に縛りつけられてしまいました… 「もういいだろう。運んでおくれ。」
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