《序章・ある少女の受難》

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…先程のお祖母さまの憎々しげなお顔が思い出され、つい私はかっとなってお膳の上の小鉢を取ると襖に向けて投げつけてしまったのです。 …勢いよく投げたつもりでしたが器は割れることも無く、襖に跳ね返った器は畳の上に転がり中身がこぼれて私の嫌いな酢の匂いが部屋に広がりました。私は、もうどうにでもなれとばかりにお膳ごとひっくり返そうと手をかけました。 …しかし、それは叶いませんでした。物音を聞きつけて部屋に駆けつけて来たお祖母さまに腕を押さえつけられてしまったのです。 「何て云う罰当たりなことをするんだ。おまえと云う子は…」 暴れる私の手首をお祖母さまは背中にねじりあげます。気が付くと部屋には私の二人のお伯母さまも居ます。 「甘い顔をしたらこの子のためにならないよ。」 腕をお祖母さまに、脚を下のお伯母さまに取り押さえられ私は畳の上にうつ伏せに抑えつけられてしまいました。上のお伯母さまが手にした縄が手首に巻きついて来ます…
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