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「強情な子ですからね…
手加減せずにしっかりとね。」
呼ばれて部屋に入って来たのは親子でこの屋敷に雇われている作男で、皆からは辰さんと呼ばれている男でした。
「これはこれは…嬢ちゃんが、なんとも痛々しいお姿で…」
口では殊勝なことを言っていますが、顔は笑っています。
「じたばたするもんだから、散々手を焼きましたよ。慌てて縄を掛けたから、あちこち緩いところがあるといけない。夜中に縄が解けて暴れたりしないようにお願いしますよ…」
…今だってこれ以上ないくらい縄がきつくて苦しいのに、お祖母さまはまだきつく縛らせるおつもりなのです。
「…ううっ、ううっ…」
私は必死で身悶えしました。その拍子にそれまで正座させられていた姿勢が崩れて、私は座敷の上にごろんと横倒しになってしまいました。
「ほらほら、きちんと縛って置かないと暴れますからね…」
「ようがす。手加減しないでいいってのならば、猪の仔を括るみたいにがっちりと固めちまって…」
手足を括られて、まるで芋虫のような私は畳の上に転がったままそれでもなんとか赦して貰おうとお祖母さまの足にすがりつこうとしました。
「ああ、うるさいね。さ、早いとこやっておくれ。」
ああ、もう駄目です。お祖母さまもお伯母さまたちも行ってしまいます…
「うう…ううっううっ…」
…けれど、無情にも私の目の前で襖は閉めきられ、座敷には私と男だけが残されました…
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