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リビングでゆっくりと珈琲を飲んでいた男に、ある一本の電話が入った。 男は読んでいた新聞紙を軽く畳むと、受話器を手に取る。 「…もしもし」 [あ、もしもしー? こんな朝早くに悪いね!] まだ早朝だと言うのにも関わらず、受話器越しに聞こえてくる女の声はまだ覚醒しきっていない頭を覚ますには十分な程に大きく、良く通る声だった。 「何だよ、いったい…」 受話器と耳の距離を空けながら用件を問うと、少しトーンを下げて彼女は話しだした。 [依頼よ。 なんでも暴力団の総長だそうだけど…] 暴力団の総長か。 最近はこんなのばっかりだ。 「なるほど…。 期限は?」 [明日までだって!] 「はぁ……」 少し憂鬱な気分のまま溜息をつくと、電話を一方的に切った。 アイツが電話の件に怒ろうと、どうせまた後で会うだろうしな。 この男の名は燈瑠 伶(ヒルウ レイ)。 赤みの掛かった長い黒髪を垂らし、髪の色同様、赤みのある黒くて冷たい瞳が特徴だ。 職は表向きには護衛だが今依頼されたように殺し屋が本職である。 人は何かのキッカケで他人や親友までをも怨み、それは醜い感情の塊。 ここ最近では依頼が絶えない。 一応、引き受けはするが、気は進まない。 それでも全てを受けている訳では無い。本当に殺すに値する人間だけだ。 それを調査するのは、事務所の奴等だが。
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