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佐尾が良い場所があると言うので、黙って彼に着いていく。
その間は無言で、取り巻き達も黙っていた。
やがて、街灯など無い、月の光しか照らす物が無い広場にたどり着くと彼は足を止めた。
「ここか…」
人の目に触れないこの淋しい空き地は、確かに条件が良かった。
少し頭痛がする。
これが酷くならない内に、さっさと終わらせたい。
周りを高い壁で隔てるこの空間の中心で、俺達は向かい合った。
佐尾は俺をジッと睨み付けると、少しニヤリと上唇を吊り上げた。
「…お前、中々出来そうだな?
こんな所に連れて来られたら普通は態度に出るもんなァ?
だがお前は違う。 落ち着いてやがる」
「……」
「それがうぜぇんだけどよ」
佐尾の目が細く冷たいものへと変わった。
拳を強く握ると、胸の前で構えた。
佐尾はだらし無くポケットに両手を突っ込んで、俺のその動作をにやつきながら見ていた。
伶が一歩前に出ると、佐尾は顎をしゃくって取り巻きを先に向かわせた。
「へへっ、構えた所で俺のスピードについて来れる筈が、ねぇだろうが!!!」
取り巻きの一人が伶の首を目掛けてハイキックを繰り出した。
確かに、言うだけのスピードはある。
それを左腕で払うと、ぴりぴりと腕が痺れた。
しかし、足を払われバランスを崩した取り巻きの身体は隙だらけで、空いている右腕で彼の鳩尾に拳を沈ませた。
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