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父上様のお手本を見ながら、私は自分でも満足出来るお手紙を書き上げたの
美しい薄紅色の透かし紙に走る平仮名
お兄様に言われるがままに書いた恋文‥
そのお兄様は私の背後、筆を持つ私に手を添えて頬と頬を寄せるのです
さすがに私もこの状況には耐えられず
かといってどうすることも出来ずに、お文を書き散らして早く終わる事を願ってました
そして書き終え、お兄様に渡すとさりげなく何時も座る席に戻りました。
今考えると、その選択は正しかった。
「筆の動き、墨の艶やかさ濃さ、どれを取っても美しい
この恋文を見たら、誰もが恋をしてしまいますね‥
この恋文、貰っていいですよね
萌黄が私に宛てた恋文を」
お兄様は熱に浮された、うっとりとした瞳をなされてました
どう返事しようかと思って居ると、渡り廊下から人の気配が‥
「姫や、稽古は順調かね」
私を蔵から出す時以来、初めてこの部屋にいらして下さった父上様。
――お会いするのは2度目です
部屋の様子を一回り見て、お兄様がいらした事に眉を寄せました。
私は教えの通りに三つ指を付き、父上様にご挨拶を述べてから、父上様を上座に導きました
父上様は頻りに頷き、私をじっと見ました
お兄様が時々おかしくなるのを
見られずに済んだと、そっと息を吐きました。
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