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私が御所の内裏入りをしてから、お兄様と逢うのは初めてでした お兄様から手紙が届いてましたが、私は逢う事を恐れて返事も書いてはませんでした。 ですから驚きました 鏡を合わせた様に、お兄様も憔悴されていたことに‥ お兄様も驚かれて、畏れ多くも帝の蘇芳様を睨みました 「‥萌黄は幸せなのですか 私は萌黄がいなくて寂しく不幸でしたよ」 「お兄様がいなくて少しは寂しいですが、蘇芳様はお優しく私は不幸では無いです」 私がお兄様に逢えない事でこんな状態になった。 そう、お兄様が勘違いなされては困るので、キッパリと言いました。 「紫苑 それでは私が、紫苑と萌黄を引き裂いたように聞こえるよ」 「全くのその通りにございます」 困った様に笑う蘇芳様と、睨んだままのお兄様 「だがね 私ではどうする事も出来ない それに 私は萌黄に心の安らぎを感じている。 どの女御を手放しても、萌黄だけは奪われたくないのだよ」 「私は、孤独なのだよ ―孤高―とでも言うのかな 神の血筋と、御所という広い広い蔵の中に閉じ込められた存在なのさ」 寂しい寂しい、笑み。 私は蘇芳様の光に隠された影を知ったのです     
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