序章

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思わず受けとる。 渡してくれた人は、紺色の学ランを着た中学生。 あまり高くない身長で、黒縁メガネをかけていた。 いま演奏しているのは「奥名(おうな)市民吹奏楽団」。 この吹奏楽団には、学生は引退した人しか入れない。 高校3年生には見えないから、きっと中学3年生で、同い年だろうと私は思った。 パーカッション(打楽器)だったようで、自分の担当の場所に戻っていった。 改めて手元の鉛筆たちを見ると、黒鉛筆は芯が折れていた。 (使って、って意味か) 赤青鉛筆は、青ばかり減っていて短かった。 (青をよく使うなら、私は赤を使おっと) 私は心の中でお礼を言いながら青い方を使った。
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