序章

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「じゃあ今日は終わりです。次は2週間後になります」 団長が次の合奏練習の予定を話す。 団長には申し訳ないけれど、鉛筆を返さなきゃ、という気持ちでいっぱいだった。 「ありがとうございましたー」 楽器を片付け始め、がやがやとするステージ。 とりあえず片付けより先に、さっきの彼の元へ向かった。 「あの、これありがとうございました」 「あぁ、はい。 君……中3?」 「はい。……同い年だよね?」 一瞬だけ、彼の表情が止まった……ような気がした。 が、すぐに彼は笑顔になって、 「うん。じゃあ、そろそろ片付けるから、また」 むしろさっきよりにこやかに返された。 「じゃあ、またね」 有紗も片付けをしなければいけないので、シンバルを磨き始めた彼に背を向けた。 (瞬、っていうんだ) 園ヶ谷 瞬 (そのがや しゅん)。 学ランのネームプレートにはそう書いてあった。
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