第3話 山崎さんの魔道書

47/56
前へ
/926ページ
次へ
 ブラウン刃物屋の店主、通称、鍛冶屋のボブは、日本かぶれのアメリカ人である。  10代の頃、たまたま日本の時代劇を見て、それに感化されてしまったとか……。  そんなわけで大学卒業後、来日、そして師匠である○○県が誇る人間国宝である刀匠、仙道道長氏の弟子となったようだ。  それはともかく。 「ここに池口はいるんだろうか……」  店の外装なんかが、いかにも西部劇に出てくるような酒場なのだが、これでもれっきとした料理人御用達の包丁なんかを売っている刃物屋である。 「ああ、師匠! あそこにいるのは池口さんですよ!」 「え、あれが!? う~ん、情報どおりの姿だわ!」  店の中を覗き込むと、レジカウンターのところに薄汚れた青い作業服、首に巻かれた赤いマフラー、それに顔を包帯で覆っている透明人間とかミイラ男を連想を否応なしに想像させてしまうような妙な男の姿が!?  う~ん、綾ちゃんから聞いた情報の通りの姿だな、こりゃ……。 「と、とりあえず声をかけてみるべきね!」  う~ん、ちょっと嫌な感じがするけど、私は刑事だ!   これも職務! 私は意を決してブラウン刃物店の中に足を踏み入れるのだった。
/926ページ

最初のコメントを投稿しよう!

551人が本棚に入れています
本棚に追加