*月光の道標

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 生きるって何ですか  死ぬって何ですか  それは、意味のある事ですか。  月光に照らされた穏やかな水面へと、ゆっくり、その身を沈める。  倒れるように水へと吸い込まれた身体。月明かりだけが唯一の光。  揺れる世界の中、翡翠の双眸は差し込む月光を眩しげに見つめた。  汚れてしまえば楽なのに。何かがそれの邪魔をした。あの家に何の思い出が残っているのか分からないのに、消す事すら叶わない。  どうしたらこの苦しみから解放されるの?  背中の傷は塞がっている筈なのに、時に酷く痛む。  一度目を閉じ水中から勢いよく顔を出すと、水面は揺れ、飛沫(しぶき)が舞う。その刹那に薄く瞼を開けると、まるで時がゆっくりと動いているかのように感じる程、はっきりと映る水の花びら。  シアの瞳は月を映した。  ――白く青く輝く月よ。  どうかその光で道を照らして。  優しくも残酷な、その光で……――  END
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