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「そういう問題じゃない。校則違反は立派な退学対象。すぐに片付けたまえ」
「固い事言うなって。なるべく多くの写真が必用なんだ。遠田のためだと思って! ほら!」
僕が譲った席に、仁頼はしぶしぶ腰掛け、メガネのずれを直した。
何だかんだ言って、こいつもお人好しだ。
勇人がカメラのピントを合わせた。
「そんな顔するな。今週の記事は、笑顔特集だ」
レンズを覗きこみながら、もう少し左だとか、髪を整えろだとか、肩の力抜けとか、勇人は意外と細かく注文をつけた。
「撮るぞ」
それだけ言って、勇人は間髪いれずにシャッターを切った。
不意打ちをくらって、目が半開きで気色の悪い笑みを浮かべた仁頼の写真が、笑顔特集の名目で掲示板に張り出され、見世物になったら……好い気味だった。
「ところで、高崎君……」
立ち上がった仁頼は、いかにも怪訝そうな顔をして、三脚の後ろの勇人の方へ歩み寄った。
「君、情報屋とかいうのを知らないか?なんでも、他人の個人情報を巧みに盗みだして商売をしているらしい」
嫌な予感がして、勇人の方を見た。
仁頼は続ける。
「もちろん、それは犯罪だ。見逃すわけにはいかない」
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