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仁頼の発言に、凍りついたのは僕だった。
勇人の仕事は執拗なまでに緻密だ。
『客』以外に正体がバレるはずない。
もしや、客に裏切り者がいるのか。
もしくは他にも情報屋が――有り得ない。
勇人は動揺しているようには見えなかった。
いつもと変わらない、挑戦するような眼差しで、仁頼を見下ろしていた。
仁頼は続けた。
「その情報屋、残念ながら、このクラスの人間らしい」
「有り得ないっつの。このクラスの連中に、そんな器用なことができるやつがいるか?」
高鳴る鼓動を抑えて、仁頼の思い込みだろと振舞った。
だが、仁頼は表情を変えるどころか、さらに勇人に詰め寄った。
「高崎君、見当はつかないかい?」
勇人は黙っていた。
黙り通すつもりだろう。
もうすぐ、クラスのヤツらが登校してくる。
「永瀬君、君には心当たりがあるはずだ」
いきなり向けられた視線に、大きな確信があった。
本当にヤバイ。
こいつは知ってしまったのかもしれない。
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