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何もしゃべれないでいるうちに、仁頼が再び口を開いた。
僅かな笑みを顔に湛えて、僕を小さな虫でも見るかのような眼差しで見下ろしていた。
「まぁ、君が幼馴染を売るなんて、有り得ないか」
仁頼の言葉に、自分の耳を疑った。
仁頼が何を言いたいのか、しばらく分からなかった。
いや、どこかで分かっていたのかもしれないが、少なくとも、認めたくなかった――勇人の他にも、情報屋がいる。
しかも、あの田辺が。
「君達にお願いだ。その気になったら、鈴華さんの情報を分けてほしい」
僕も勇人も、何も言わなかった。
勇人はいつも通りのポーカーフェイスで、それでもきっと、頭の中では、突然入ってきた新しい情報を必死で整理しているに違いなかった。
「クラスの風紀を乱さないためだ。よろしく頼む」
仁頼が自分の席に戻ろうと振り返った時、勇人が不気味に笑ったのを、僕は見逃さなかった。
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