とある依頼

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「和紀、お前、田辺鈴華(レイカ)と小学校同じだったよな」 「そうだけど、なんで?」 僕は田辺の方を見た。 帰る準備をしながら、友達と和やかに会話を楽しんでいる。 生まれた時からご近所さんだったアイツとは、幼稚園、小学校と、アイツが私立中学に入るまではずっと一緒だった。 確かに美人と言われればそうも見えるが、とりわけ秀でているというわけでもなく、言わば、普通の一般女子だった。 「依頼が入った。片思い。田辺の写真が欲しいんだと。でもさすがに小学校じゃな……」 言葉を詰まらせたかと思うと、勇人は慣れた手つきで学ランの内ポケットに手帳をしまい、代わりにそこからデジカメを取り出した。 「それってストーカー染みてない?」 デジカメを指差してそう言うと、勇人は鼻で笑った。 こいつはいつも、そういう笑い方をする。 きっと幼稚園ぐらいから、ニコリと笑う方法を忘れてしまったのだろう。
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