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「情報屋は法律違反はしない。俺が盗撮でもすると思ったか?」
そう言うと、勇人は夕焼けの空にカメラを向け、その景色を収めた。
「何故に夕焼け……」
「美術部員からの依頼。風景画の題材用だ」
そして、画像を確認した後、再び手帳を取り出し、パラパラとめくりだした。
「任せとけ。了承は得るよ……あった。見ろ。隣のクラスの遠田(オンダ)吉光、新聞部。信頼厚く、優等生。こいつから、今週の学校新聞の記事を笑顔特集にしたいから、写真撮ってきてほしいって頼まれたって言えば、何とかなるだろう。ついでにいい機会だから、ひとりひとり、クラス全員分、頂いとくとするか」
「でも、バレたら?遠田はそんな記事書く予定ないんだろ?」
「いい写真が手に入りそうだから、記事書かないかってあらかじめ言っておけば、あいつのことだ、喜んで書いてくれるさ。遠田は利口だが気が弱い。自分から人に話すことはないだろう」
あまりにもすらすらと言葉が出てくるので、僕は恐怖に近い物を感じた。
「慣れてるよな」
「これが仕事だからな」
勇人は再び手帳を閉じた。
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