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次の朝、空気も冷たい中、勇人のことが気になって早めに登校した。
気付けば、先週まで見頃だった桜がほとんど緑に変わっている。
案の定、静寂の教室に既に勇人がひとり待っていた。
「おはよう、和紀。もっと早く来ると思ってたんだが……」
勇人はそう言うが、まだ6時半だった。
太陽がようやく昇ったばかりだ。
「作戦はこうだ。これから最初に教室に入ってきたやつに、お前が俺に写真を撮られているところを見せる。笑えよ。そんで、来たところで、お前が声をかける。お前もどうだってな。いいか」
勇人はいつも通りの淡々とした口調で話した。
「ああ、わかった。でも――」
「何だ?」
「いや、僕は情報屋の仲間じゃないのに、何で勇人は自分の情報提供してくれるのかなって。プリン無しで」
正直、不思議だった。
こいつの考えが、本当に読めない。
こいつのことだから、何か裏がありそうに感じた。
かといって、深く疑ったことも無かったが。
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