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「なんだ、そんなことか」
僕の真剣な質問を、勇人は見事に笑い飛ばしてくれた。
「情報屋って仕事はな、バレたら恨みを買うこと間違いなしだ。俺はいろんな人間を知ってるが、自分の身の安全より、友達をとるやつって、お前ぐらいしかいない。それとも、何も考えずに俺と付き合ってるのか?」
「いや、ただ……」
答えになっていないと思ったが、僕はそれ以上、そのことについては追及しなかった。
勇人は手帳を取り出し、新たな書き込みを加えた。
『永瀬和紀。単純、無垢』
「で、そのカメラを使う、と」
勇人が今正にセットしようとしているのは、入学式の集合写真で使う、三脚付きの、あの大げさなカメラだった。
完璧主義なのか、単なる阿保なのかはよく分からなかったが、とにかく5分もかからずに(慣れてるんだな)、教室の一角に、照明まで用意された、大層ご立派な写真撮影会場が出来上がった。
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