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ある世界に、いくつかの命がうまれた。そのうちのひとつ……
豪華な部屋の中で大きな赤ん坊の泣き声が響いた。
しばらくして、慌てた様子の男が走って部屋の中に入ってきた。彼は、妻と先ほど生まれた子供を見た。
鋭い目から涙が溢れ出てくる。
素速い身のこなしで寝ている妻に近づいて抱きしめる。そして一言。
「ありがとう」
後は感極まって何も話せない様子だ。男の妻は半身を起こし、優しく抱きしめる。
やがて、男はあるものを取り出した。魔力感知のための魔石。
この国のしきたりで必ず赤ん坊の魔力を調べる事になっているのだ。
男の妻は少し不安そうに男に話しかけた。
「この子、魔力あるかしら。無かったら……」
「しきたりで十歳の時に‘試し’を受けなければならない。しかし、大丈夫だよ。」
魔力量は親から子に受け継がれる。多少の変動はあるものの、親が大量の魔力を持つならば、子も同じ位の魔力を持つ。
男は、魔石を我が子に当てた。
赤ん坊の鳴き声のみ辺りを支配する。
かなりの時間が過ぎ、青い顔で男が呟く。
「何の変化もない……」
予備の魔石も何の反応もなかった。
「これでは……」
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