誕生

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岡田家は約二十石の郷士の家、下級武士の家でも女子は跡取りにはなれない、しかし義平は我が子に以蔵という男の名前をつけた。 男として育って欲しいと思ったからだ。 そして十数年の月日が流れた。 岡田以蔵は七軒町という町の外れの林で自分の剣の腕を磨いていた。剣術道場に行くお金もない以蔵は、我流で自分の腕を磨くしかなかった。 町の者は自分を『七以』と呼び、蔑んでいた自分が女でそれでいて剣の腕を磨いているのが面白くないのだろう。 そんな以蔵を父義平は守る事もせずその頃生まれた次男の事で頭がいっぱいだったそう次男。事実上長男で岡田家の跡取り。 岡田以蔵は岡田家ではもう要らない存在になっていたのだ。 以蔵にはもう信じる者が己の剣(木刀)しかなかった。
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